さわらびの譜

葉室 麟 著 さわらびの譜

 

 有川将左衛門は扇野藩の勘定奉行である。祖父は藩の弓術師範を務めていたが、父の代から御用繁多を理由に師範を遠慮している。有川家が伝えるのは日置流雪荷派であり、父子相伝で弓術の印可を伝えてきた。将左衛門の子供は伊也、初音の娘二人であり、男子はいない。姉の伊也が六歳の時に、弓術の稽古を始めさせた。将左衛門は伊也に天稟をみていたので、妹娘の初音には弓術を仕込もうとしなかった。

 正月に城下の八幡神社で行われた弓術奉納試合に、伊也は男装で出場した。すらりとのびた背筋をしならせ、きりっとした容貌の伊也が弓をひくと、見物の武家だけではなく町人、百姓の息を呑んで見守り、的を射るたびに境内にどよめきが起きた。この日の試合は大和流の樋口清四郎が、伊也よりの一個多く的を射貫いて制したが、伊也は瞬く間に、--弓矢小町と評判になった。

 

 これらの登場人物と、有川家に寄寓している新納左近が加わって物語は進んでゆく。

 

 面白いのは面白い。しかし葉室麟の作品に共通すると思うが、終りが安易すぎる。もう少し必然的な筋運びにしてほしい。

 

 

 

 

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