お葬式

遠田潤子 著 お葬式

 

 「片瀬 在」は大学生。二年前に母を亡くして父親と二人暮しだ。

 ある晩、警察から電話で父が事故を起こし病院に運ばれたと連絡があった。家を出ようとしたところで、目に前に少女が立っていた。セーラー服の少女で、傘も差さずにずぶ濡れだ。慌てて車を降りて、大丈夫ですかと声をかけたが、突然くるりと背を向けて駆けだした。百合の花が一輪落ちていた。

 中川という顧問弁護士に連絡をした。

 その晩、父は逝った。

 中川弁護士が、封筒を取り出した。

 中には父の几帳面な字で、

 『葬式不要、戒名不要、弔い事一切不要。書斎の机の中の書類は決して目を通さず、すべて処分すること。以降、書斎への立ち入りは厳禁とする。

 ある程度の 百合投げ入れよ 棺の中』 

 

 事故を起こした父の車の中には、百合の花が一輪落ちていた。-----

 

 

 

  

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