還れない風景

篠田節子 著 還れない風景

 

 オール讀物 5月から連載されている 還れない風景 です。今で4回です。何回続くのでしょうか。面白いです。

 富岡 碧 の父親がフェリーからの転落事故で、行方不明になってから四日目に遺体で見つかった。遺体確認して警察から帰った母には、喪失感や悲しみといった感情はまったく見られず、むしろこんな形で迷惑を被ったのを怒っている。碧は葬儀に使う写真が全く無いことで母親と喧嘩した。母親は葬式の準備をほり出して姉夫婦の所へ行ってしまった。姉夫婦が実家にやってきて、姉は碧に言った「写真を母が捨てたのは、二十六年間、裏切られていたんだから」

 父 富岡康弘は、旧財閥系の重工業メーカーに勤めていた。五十五歳で子会社に出向。翌年、実父が倒れ、他に看る人がいなかったので、定年を待たずに退職し、四年近い介護生活が終わった。今後の身の振り方を考えている時に東日本大震災が起きた。ボランティアとして活躍し、被災地の一次的な援助活動が終わり東京に戻り一ヶ月たった八月、父は四国巡礼に出ると言い残し、車で東京を発った。十二月下旬に父は徳島からフェリーに乗り込み、そのまま生きたまま東京に戻ることはなかった。

 父の大学時代の友人 笹岡紘子 が仙台で震災の為に亡くなっていた。父がたびたび被災地入りの理由はそれだった。

 碧は四月の終わり、連続した休暇を利用し父のたどった四国に行く。

 

 

 

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