影ぞ恋しき

葉室麟 著 影ぞ恋しき

 

 「雨宮蔵人」は、九州肥前の出身の藩士であったが出奔し、今は妻「咲弥」と共に、鞍馬で暮らしている。娘「香也」がいる。

 蔵人が杉木立で、稽古していると、持っていた木刀を切り捨てて、疾風のように逃げ去った男がいた。それを元藩士の従兄弟の「清厳」、俗名「深町右京」が見ていた。

 清厳は、国元からの便りを持ってきた。

 四人で夕餉をしているとき、客人が訪れてきた。「冬木清四郎」という。「吉良様」の家人である。十四、五の少年である。先ほど、蔵人の木刀を両断した男である。

 「吉良佐兵衛」が香也に会いたいと、幽閉先の諏訪まで来て欲しいと言いにきたのである。吉良佐兵衛は、赤穂浪士に討たれた「吉良上野介」の養子で、吉良家を継いでいた。幕府に咎めを受け、諏訪に幽閉されてる。

 香也は、吉良上野介の孫である。-----

 

 

 

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