朝井まかて 著 悪玉伝
面白いです。
「木津屋吉兵衛」は、奢侈、僭上の仕儀が甚だしかった。公家の堂上家に取り入り、図書(ズショ)なる名を貰い受け、奉行所の許しも得ず大坂往来を練り歩いた。
若い時分から湯水のごとき銀子を使い、大坂のみならず京でも放蕩の限りを尽くした。
前妻を病で喪った後、島原の遊郭で見染めた禿を、後妻として娶った。「お瑠璃」と言い、十六歳である。
長年の放蕩がたたり、商いが傾き通しで身代が潰える寸前である。
吉兵衛は、堀江吉野屋町の薪問屋、辰巳屋に生まれた。当主「久左衛門」は実兄で、木津屋は亡くなった父親の生家だ。父は自身の生家が跡継ぎに恵まれぬを見て取るや、次男である吉之助を持参金をつけて、養子に出した。
「大和屋惣右衛門」、「枡谷三郎太」、大坂東町奉行の用人「馬場源四郎」は長年の遊び仲間である。
五十にもなっていない兄が亡くなった。
慌てて実家へ駆けつけると、若い大番頭が仕切っていた。-----
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