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風聞き草墓標

諸田玲子 著 風聞き草墓標

 

 「せつ」の父は佐渡奉行「荻原源左衛門」である。小姓組に属する旗本「根来長時」の妻女である。十八で嫁いで十八年、子供たちは健やかに育っている。

 ある日、夫の不在中に来客があった。大岡越前守忠相、町奉行である。せつは夫 長時が帰宅しするまで相手をした。大岡は、江戸の儒学者が金沢に知己の送りつけた文書をそのまま書き留めた文の写本の話を知っているかと、長時に聞いた。長時が父から聞いていないかと問うた。長時は知らなかった。

 その写本の内容は、二十年以上前の話で、勘定奉行だった近江守萩原重秀にかかわることであった。近江守の解任、急死、不正発覚、銀座摘発と続く一連の事件である。この事件は、せつにも大きな影を落としている。近江守の嫡男「荻原源八郎」と婚約をしていたのだが、この事件で縁談は流れた。源八郎は父に不届きがあったと断じられ、三千七百石から、七百石に減じられた。しかし二十余年が過ぎて、源八郎は、せつの父と同じ、佐渡奉行に就任していた。

 せつは近江守を会っているのを思い出した。それは近江守が解任され、せつの実家に呼ばれ、何日が滞在していた時のことである。近江守はいつもとは別人のように、うらぶれた格好をしていた。近江守は庭に何かを埋めていた。------

 

 

 

 

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