小説新聞社販売局

幸田 泉 著 小説新聞社販売局

 

 「神田亮一」は大和新聞の編集部で記者をしていたが、編集局長「古石幸太郎」に新聞記者としてこれから最も脂がのる年齢三十七歳の時に『お前はもう記事を書かなくいい』と言われて、販売局に移動した。販売推進部で購読を呼び掛けるチラシを作ったり、読者からの苦情を受け付けたりしていた。

 二年後、販売局次長の「花隈信也」から、販売推進部で『担当員』をするように言われる。担当員の仕事は優秀な販売店を育てて、大和新聞の販売網を強化することである。

 

 しかし神田は新聞業界最大の暗部である『残紙』に直面するのである残紙とは、印刷工場から販売店に輸送された後、読者の元に届けられず販売店に残る新聞紙のことである。新聞社が発行部数を大きくみせたがためである。

 

 新聞の印刷工場から販売店に輸送している部数を ”送り部数” で公称部数となる。きちんと購読料を支払っている読者のいる部数を ”発証” と言い、これが販売店の収入になる部数である。新聞を配達しても収入にならない無代紙も含め、読者のいる部数を ”実配” と言う。 ”発証” は ”送り部数” の60%程度、 ”実配”  は ”送り部数” の70%程度と言われている。

 

 確かに、新聞業界の暗部ですね。

 

 

 

 

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