テミスの休息

藤岡陽子 著 テミスの休息

 

 「沢井涼子」は法律事務所開業と同時に採用された、ひとりきりの職員である。弁護士の「芳川有仁」は四十四歳の涼子より四つ年下である。

 涼子が横浜市の鶴見で暮らし始めたのは今から八年前での三十六歳の時だ。芳川も大手法律事務所から独立し、鶴見で事務所を立ち上げたばかりで、引っ越し時の芳川を見て、涼子はハロワークを通じて応募したのである。涼子は離婚し二人暮らしが始まったのは、息子「良平」が小学一年生だったが、今では中学三年生である。

 ここからの二年間、六件の案件と、涼子と芳川の関係の話である。

 

 芳川有仁は母「芙紗子」に頼まれて、奈良県吉野郡下北山村へ向かっている。新幹線で二時間、名古屋から特急で三時間、駅から村まで車で一時間かかる。母方の実家である。高校三年生の時、祖父「穂崎竜仁太」が亡くなって以来である。祖母「シズ」が亡くなり、その遺言状でもめているのである。シズは、夫=竜仁太の愛人の息子「平木紀行」に全財産を相続させると正式な遺言状に書いていたのである。

 シズの長男、次男、長女、次女(芙紗子)、シズの弟等が集まっていた。

 有仁が高校一年生の時、平木紀行が十歳の時、一週間だけ同居していた事があった。その時以来、有仁と紀行はあっていない。

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