山口恵似子 著 早春賦
「菊乃」は「大堂勝太郎」の長女である。兄が二人いる。勝太郎は札差上がりの政商である。勝太郎の妻「佳乃」は落ちぶれた五千石の大身旗本の息女である。勝太郎は娘の菊乃を呼んだ。勝太郎の目の前に並んだ母子はとにかく美しい。二人揃うとさらに美しい。
話は菊乃の縁談である。「西園寺公望」侯爵の肝入りで明治維新前は大納言であつた「二礼信敬」伯爵の子息「二礼通敬」と話である。二礼家は持参金目当てである。
菊乃は見合いの席で、通敬に一目ぼれをした。
二礼信敬伯爵の夫人で通敬の母は五年前に亡くなっている。通敬には「秀敬」という三つ違いの兄がいたが三年前に亡くなっている。秀敬の夫人「五百子」は蒔田侯爵の令嬢で、子供はいなかったが夫亡き後も実家に戻らず、二礼家で暮らしている。
結婚式の後、三日続いた晩餐会の後の初夜で、菊乃は『自分がまったく特別に扱われていないこと、少しも大切にされていないこと、およそいとしいと思われていなことが身に沁みて感じられた。その感覚が皮膚を通して心に突き刺さてくるようだった』-------
菊乃の四半世紀です。大変面白かったです。
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