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馬車が買いたい

鹿島 茂 著 馬車が買いたい

 

 本書は、「ウージェーヌ・ド・ラスチャック」(バルザックゴリオ爺さん』)、「リシュアン・ド・リュバンプレ」(バルザック『幻滅』)、「ラファエル・ド・ヴァランタン」(バルザック『あら皮』)、「フレデリック・モロー」(フローベル『感情教育』)、「マリユス・ポンメルシー」(ユゴーレ・ミゼラブル』)、「ジュリアン・ソレル」(スタンダール『赤と黒』)、等 小説の主人公の背景を書いている。

 いずれの小説も、高校時代に愛読していた小説である。また最近、リージェンシー物を読むようになり、当時の交通手段 ”馬車” について読みたくなり本書を借りましたが、再延長ができなくて、返却期限までに全部を読むこと出来ませんでした。

 

 『ショセ=ダンタンでは、レストー夫人の中庭に、二十六歳の男のしゃれた一頭立て二輪馬車が控えていた。サン=ジェルマン地区では、大貴族の贅沢な馬車、三万フラン(三千万円)を出しても買えそうにない馬車が待っていたのである。---------『これが箱馬車の男だな!』と彼はつぶやいた。『それじゃあやはり、パリの女に振り返ってもらうには、ぴちぴちした駿馬や、召使のお仕着せや、あり余るほどの黄金がなくちゃいけないというのか?』贅沢の魔が彼の心臓を食い破り、金儲けしたいという熱望が彼をとらえ、黄金の渇きが彼の咽頭をからからにした。彼はこの四半期分として、百三十フラン(十三万円)しか持っていなかった。彼の父、母、弟たち、妹たち、叔母は、みんなで月に二百フラン(二十万円)しか使わないのだった』(バルザックゴリオ爺さん』)

 

 三千万円出しても買えない馬車と三か月の生活費十三万円。ラスチャックをはじめとする我らが主人公たちの物語は、基本的に、彼らがこの彼我の差を埋めようとして、ひと言でいえば」『馬車が買いたい』という欲求を満たそうとして、上流社会や自らの自尊心と格闘するドラマであると断言することができる。

  

 

 

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