峠しぐれ

葉室 麟 著 峠しぐれ

 

 面白いですね。いい小説です。

 朝霧峠に茶店がある。峠の西側には岡野城下が、東側には隣国の結城藩とつながっている。店の主人は「半平」という四十過ぎの男で「志乃」という三十五、六の女房が手伝っている。半平は小柄で寡黙な男で店の奥で茶や団子の支度をしていた。表で客の相手をするのはもっぱら志乃の方で目鼻立ちがととのってほのかな色気があり、峠の地名にあやかって『峠の弁天様』と親しまれていた。二人は十年の歳月をここで過ごしている。

 岡野城下の安原宿で宿場役人をしている金井長五郎との交流や、夜狐という女盗賊らを通じて、半平、志乃がこの峠に来た理由が徐々に明らかになって行くと共に、事態は急を告げ過去と現時点が結びつく展開となる。

 この作家の結末は、何か尻切れトンボ、あるいは安易な幕切れな場合が多いが、本書はなかなか納得のゆくストーリだ。

 

 

 

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