無頼の辻-中山道活人剣-

羽太雄平 著 無頼の辻-中山道活人剣-

 

 羽太雄平は私の好きな作家です。しかし本書は、『本多の狐』、『榎戸与一郎シリーズ』ほどの面白さは無い。

 両国橋の紙問屋に勤める「為吉」は十歳のときに丁稚、十八年間真面目に勤め手代になった。主人には何かと頼りにされ、まもなく次席の番頭にと期待されていた。その主人から、上野の「覚善坊さん」が紙納入の入札を教えるかわりに素人女を抱かせろと言われていると相談を受け、為吉は幼友達に相談し、根岸の茶屋を教えて貰う。

 為吉は茶屋の亭主に事情を話したところ、三両の手付、さいわい主人から預かった金があった、で女に会う。今日が初めてという。為吉に女を抱くつもりはなかったが、女が着物を脱いだために欲望は抑えようなかった。女はわずかに眉をひそめるだけで、白い肌や息遣いは冷たかった。遠花火のようであった。あきらめて体を話そうとしたとき、異様な臭いを嗅いだ。女の体がびくとした。腋窩からの臭いである。女は声をあげ、為吉の背中に爪をたてた。遠い筈の花火が耳のそばで鳴った。

 為吉は女に会う為に、賭場に通うようになる。三両の金を手に茶屋へ行くとあの女はもう来ないと亭主は言う。女に逢えないまま二年、賭博の腕だけが上がった。ところが茶屋の前にとまった駕籠からあの女が下りてきた。金を工面するために賭場へ来た。いかさまに便乗し、三十両を手にした。そこで知り合った武士「安西要助」にひと山の駒を渡した。

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 紆余曲折し、為吉と安西要助は中山道を旅する。あの女は安西の妻であった。

 

 

 

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