化土記(けとうき)

北原亜以子 著 化土記(けとうき)

 

 この処、女性作家が続いています。筆者は、『深川澪通り木戸番小屋』、『恋忘れ草』(93年直木賞)、『慶次郎縁側日記』等の作品があります。本書は2001年4月~2002年4月まで新聞に連載され、2004年11月に単行本化されました。筆者は2013年3月に逝去しています。したがって、単行本化に際して、加筆、修正が出来なかった。筆者が元気であれば、当然いろいろ直したかったのではないかと思われます。

 

 素晴らしい緊張感で物語は始まる。登場人物が多い上に、新聞小説向けに書かれた為か、話が細切れ的になり、やや散漫になる傾向がある。登場人物欄がなければ理解が困難になる。

 『勘定吟味役をつとめる 栗橋伊織 は、宵の五つを過ぎて、珍しく不機嫌で帰宅した。妻 花重 が夕食の支度を調えたところ、「やはり、出かける」と伊織は立ち上がった。そして仏間に入った。 先刻も仏壇に手を合わせていた。再度仏壇に座った。花重は女中に若党と中間に伊織の外出を知らせるよう言い、着替えと、新しい足袋を用意していると「すまぬな」という声が聞こえた。いつの間にか、伊織がうしろに立っていた。「花重ーーー」帰宅した時の機嫌のわるさが嘘のように、伊織は笑っていた。「いろいろと、すまぬ」伊織の笑顔は、透きとおるように美しかった。』

 だいぶ端折りましたが、これが連載一日目でしょうね。そして伊織は戸板に乗せられて帰ってきた。

 天保14年、外国船による浦賀が封鎖された時に備えて、老中水野忠邦による、印旛沼の水運工事が、物語の背景になっている。

 

 

 

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