パリわずらい 江戸わずらい

浅田 次郎 著 パリわずらい 江戸わずらい

 

 表題を見た時は、パリのことを書いているのかなと思っていましたが、旅にまつわるエッセー集です。それもその筈で、初出はJALの機内誌に掲載されていたものです。

 エッセーというのは、片手間に書いたもの、こんなこと言うと失礼ですが、長編に比較すると当然そうでしょう。まあ、しかし、文章はうまいです。

 筆者ぐらいになると、編集者は「初出誌」、「単行本」、「文庫」の三名になる。十社以上の付き合いがあり、三十人を超える。そのうち二十五人は女性である。彼女たちはスーパーキャリアであり語学堪能である。東大卒もいる。スーパーキャリアは寿退社しない。やがて管理職になり、担当はどんどん若返ってゆく。また化粧もファッションも垢抜けしている。

 彼女たちと海外取材にでかけ、早朝のホテルの廊下やレストランでは、ハゲデブメガネのアブラオヤジ(筆者のこと)に胡乱なまなざしが刺さる。筆者の顔を知っている日本人観光客は蔑んだ視線を向ける。確実に読者を失った気がする。作家と編集者の間には、一つの作品を協力して作り上げる親密感が必ずあって、はたから見ると、のっぴきならぬ関係と誤解される。

 

 

 

 

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