嫌な女

桂 望実 著 嫌な女

 

 秀作だと思います。最後の方、泣ける所がありました。涙が滲みました。

 石田徹子は大学四年の時に、司法試験に一発合格した。同期の司法修習生の中でも最年少だった。研修の最終試験では一番の成績を取った。だが女であった為、受け入れてくれる弁護士事務所はなかなか見つからなかった。大学時代のゼミの担当教授の紹介で、弁護士事務所を開いてから五年間、ずっと一人でやってきた荻原道哉の事務所で民事専門のイソ弁として働き始める。みゆき という事務員がいるだけの小所帯である。

 二週間たった時、徹子の親戚(祖母の妹の孫)の小谷夏子から相談したいことがあると言われる。十七年前に一度会っただけである。自分中心でないと我慢できない女の子であった。婚約者から婚約破棄の慰謝料百万円を請求されているという。荻原からは、「すべての関係者から話を聞くこと」「関係者全員の所へ何度も通うこと」とアドバイスを受ける。夏子という人物像が明らかになる。最終的に原告が慰謝料請求を断念した。

 五年後、名古屋にいる 夏子から電話がありトラブルに巻き込まれているので、助けて欲しいと言われる。五年前の相談に対する実費は、五年間支払われていなかった。徹子は「五年前の未払い金と、今回の相談料の振込みを確認しないと話を聞かない」と返事をすると翌日には振り込まれた。

  弁護士の勉強会で知り合った弁護士 坂口 とは五年越しに付き合っている。

事務所の荻原から「徹子先生には不満が上がっている」と言われる。「親身になって貰えない」と。荻原は、これまで徹子を全く指導してこなかったのを反省し、一つの案件を二人で担当しようと言う。

 人に興味がないにもかかわらず、夏子にだけはもっと知りたいと思う。外見にずば抜けたものはないし、知性はなったくない。楽しい時間を演出することは出来るかもしれない。それだけなのに夏子はいつも男たちに囲まれている。

 七年後、また夏子から連絡があった。弘前である。前の男性と離婚し、別な男性を看取った。遺産トラブルである。その間に徹子は坂口と結婚し離婚している。依頼人に対しては無心にひたすら見つめ返すと本音が引き出せるようになっていた。徹子へのクレームの減っている。

 四年ぶりに夏子に会う。和歌山である。絵の売買トラブルである。

 七年ぶりに夏子は連絡してきた。山口県である。お布施詐欺のトラブルである。

 九年ぶりに夏子に会った。横浜である。夏子も、徹子も五十六歳になった。

 九年経過している。徹子は弁護士事務所をセミリタイヤしているが、また夏子の案件を抱えている。

 徹子は七十一歳になっていた。弁護士事務所から依頼される仕事は激減していた。夏子からみの仕事があった。

 お金が好きな間抜けな詐欺師である夏子を中心に回って行く。夏子は弁護士事務所のアイドルだ。

 

 

 

 

===================================================================

===================================================================