夢の定かに

澤田瞳子 著 夢の定かに

 

 聖武天皇時代の後宮での采女達の話である。後宮には女官が六百人いるが、その仕事は天皇が正しい政務を行えるよう、天皇の日常を万事抜かりなく補佐するのである。

 氏女とは畿内豪族の娘。これに対し、畿外諸国の郡司の子女は采女と呼ばれ、ともに一族の期待を担って働く下級女官である。氏女・采女のほとんどは出仕から五、六年もすれば後宮から退き、官吏の妻になったり故郷にもどったりする。十年、二十年と仕事を続ける者もいるが、後宮十二司の長官には貴族の妻や王族の子女が任じられるのが決まり。氏女なら次官、采女なら三等官まで出世すれば上出来である。

 四人の采女、若子、笠女(かさめ)、春世、志斐弖(しひて)、を中心とする話である。

 物語は、727年、長屋王の変(729年)が起こる前に終わっている。737年には疫病が流行し藤原四兄弟が死亡している。この物語の後編を、これらの事件と絡めて書かれると大変面白いだろうな。

 

 

 

 

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