おどろきの中国

橋爪大三郎大澤真幸宮台真司 著 おどろきの中国

 

 本書は三人の社会科学者が、中国という社会の原理について、中国の過去と現在について、今後の日中の関係について論じた鼎談である。

 

文字(漢字)について面白い記述があった。

 文字は、今でこそ、ほとんど世界中で使われていますが、独自に文字を作ったところは、メソポタミアとエジプトとマヤと中国の四つしかない。

中国語の大事な特徴は、概念の数だけ漢字があり、それが一字一音である。このため、発音が複雑。母音が三十七、子音が二十いくつ、さらに声調(四声)があり、組み合わせるとだいたい千六百音ぐらいになる。これだけの音を言い分けられ、聴き分けられれば、常用漢字がだいたい三千ぐらいなので、ほぼ一字一音になる。そうすると音を聞くと、頭の中に漢字がひとつずつパ、パ、パ、と浮かんでくる。

日本語は母音、子音ともに貧弱なので、漢字を組み合わせると、同音で意味の違う言葉が出てくる。この同音異義問題で、漢字を想起しながらでないと会話できない。

 

盧溝橋事件

 日本がソ連と戦う場合、中国の「好意的中立」を求めなければならないのに、日本陸軍の外交知識の乏しさから、華北に「非武装地帯」を作ろうとしたのが日華事変の始まり。

歴史認識

 東京裁判という虚構図式の踏襲が合理的である。だから、謝罪といっても、単に「日本が謝罪する」というあいまいさを避け、「A級戦犯が指揮した作戦行為や戦闘行為は悪かったし、それらの行為が悪かったことを政府や国民は理解しているし、A級戦犯を自力で取り除けなかったことを悔やんでいる」と言えばよい。

戦争世代から離れた世代が心から謝罪の気持ちを持続できない。後続世代は東京裁判図式が持つ意味をよく理解し、未来志向的な信頼醸成が最終的に得になる。

社会主義市場経済

 アメリカのバックアップと、中国人の努力の合作。中国の安全を保障したこと、共産党の支配が続いてもいいと容認したこと、資本と技術を提供したうえアメリカの市場を開いたこと、これらの条件がなければ改革開放はないわけだからアメリカの支持と承認あっての出来事。

日中関係

 日本の選択いかんで、日米関係や日中関係がどうこう出来ない。

中国は、日本よりアメリカを重視、アメリカも、日本より中国を重視しているから、日本のことは後から決まる。それを日本は適切に予測しなければならない。そしてどう行動する考える。

 2010年の尖閣諸島での巡視船と中国漁船の衝突事件

田中・周恩来協定、大平・鄧小平協定で日本の実行支配の領域に中国漁船が入ってきたら、退去要求、それに従わなければ停船、逮捕、「逮捕・起訴」ではなく、「拿捕・強制送還」とする暗黙のルールがあった。民主政権はそれを知らなかった。

 1980年頃の対中感情は親しみを感じるが八割近くいた。天安門事件で二割が減少、2004年のサッカーアジアカップの反日暴動でさらに二割が減少、そして2010年に更に二割減少し、親しみを感じる人は二割しかいない。

 

 

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